館長の三木です。マンガや妖怪を語るのは大好きです。今回は文化人類学的?社会学的?精神分析学的?いずれにしても香川さんの文章の第一印象は「鋭い」です。私の分析を少々。妖怪は近代を生きている「私」の内面に生きている。「私」自身を計りしれない存在として私たちは自らを認知する。文末には、『「私」は私にとって「不気味なもの」となり、一方で未知なる可能性を秘めた神秘的存在となった」』の一節からも香川雅信の今を生きる私たちにむけられたメッセージ性が読み取れる。文の展開は、倫理では試験によくでるフーコーの考え方を引用し、言語活動を実践する人間が自分たちの作った言葉の枠組みに縛られ、コントロールされているという、つまりは、「人は自ら生み出した文化に縛られるという」一見、逆説的だが、自明な論によって展開されている。そして、妖怪は、かつては言葉を伝える「記号」であり、「物」であり、さらにそれは絵画的な表現も含む「表象」となった。ところが科学の発達で私たちは人間は内心を分析し始め、分析しえない不気味さを「私」に感じ始めていると言うのだ。
この1年、試行テストのせいで、予備校では図1、図2、時として図3くらいまである評論を徹底的に演習してきたが、ちょっと拍子抜けした感がある。表や図の類は全くなかった。設問も予想外の形式のものは一切なかった。共通テストの練習問題や模試を解くたびに、都会の昔の景観写真と今の景観写真を比較して評論したり、著作権の資料を読んで、資料を見ただけでわかることを根掘り葉掘り説明したり、文章Ⅰと文章Ⅱを読み比べて、忙しくページを行ったり来たりして、授業をしたのがちょっと悔しい。
結論としては、来年の共通テスト対策は過去のセンター試験の問題を使って解いても何の問題もない。しいていえば、カタカナが多くなった。2020年実施の評論はレジリエンス、サステナビィリティー。今年はアルケオロジー、エピシテーメーなどの概念が出てきた。来年のカタカナは何かなと期待している。